高齢になって心身の機能が低下し手足が動かなくなったとき、車椅子で外出して好きな買い物をして友だちに会うというような社会参加を手助けするということには、二つの意味があります。
手足が動かないので車椅子を押してあげるというのは、高齢者の目的を具現化するための具体的な「自立支援」です。しかし、介護者がもし高齢者の気持ちに関係なく「あそこに行きましょう」「今度はこちらです」と勝手に車椅子を押して行ったのであれば、高齢者は自分の意思のままに自分らしく行動しているとは言えません。外出という目的は達成されたかもしれませんが、高齢者の意思は無視されています。このようなことが続くと、高齢者は自分自身の気持ちで物事を決定するという自律性が損なわれてしまうのです。つまり、自立支援の中身には、高齢者の主体性を引き出すという自律支援も含まれているといえます。
「待つ」というのは、意外に難しい仕事です。なぜなら、高齢者の代わりにしてあげることのほうが、時間的にも精神的にも楽だからといいます。スタッフの少ない施設介護者にとっては、ゆったりと見守っているよりすぐに介助してしまうほうが効率がよいのです。そのため、高齢者を寝たきりにしないようにすることや閉じこもりを防止するということは、介護者に相当な忍耐力が要求される仕事となります。それでもすぐに手助けをせず、高齢者が自分の力でやろうとするまで少し待つということは、高齢者の主体性を引き出すためにも大切な仕事なのです。